【保side】
俺は病院を退院し一ヶ月もの間、雫からの電話を毎日待っていた。
「電話もないし、メールもしてこない。あいつ、連絡先を受け取ったくせに何を考えてんだよ」
携帯電話を片手に握り締め、一人でブツブツ文句を言っていると、桜田剛《さくらだつよし》が背後から声を掛けてきた。
「なぁ……保。明日休みだよな。暇か?」
「ん?明日なら暇だけど?」
「俺さ、明日、SNSで知り合った女性と会うんだよ。初デートなんだ」
「SNS?お前、そんなつまんないことしてるのか?」
「つまんなくないよ。結構楽しいぜ」
「SNSでのやり取りだけなんて、そんなのつまんないよ。やっぱり目の前にいる女と付き合わないとな。本名かどうかもわからないだろ」
「だから、彼女と明日会うんだよ。それでさ、彼女がもう一人連れて来るって言うから、お前付いてきてくれないか?」
「付き添いか。別にいいけど。俺が行くと、剛の彼女をお持ち帰りしたりして」
「な、な、なに言ってんだよ。そんなの絶対にダメだからな」
「初対面なんだろ。お前、俺に勝てる自信ある?」
剛が俺の顔をマジマジと見る。両手で自分の頭をボカボカと殴り大声で叫んだ。
「くそーっ!勝てねぇよ!」
「だろ?俺より平田を連れて行けば?平田なら、お前が勝てる。そうしろ」
平田も俺達と同期だが、身長も低く体形は小太り。剛の方が平田より高身長だし、顔は普通でも平田よりはかっこいいからな。
「彼女の画像があるんだよ。見る?彼女の友達も可愛いんだ」
剛は携帯電話を俺に差し出した。画面に写し出された二人の女性。
俺の視線は、その画像にくぎづけになる。
「雫……!?」
「えっ?お前、彼女のこと知ってるのか?」
「この二人、俺が入院していた病院の看護師だよ」
「う、うそっ!?なんだよ、見舞いに行けばよかったな。や、やばい。俺、区役所勤務の公務員ってことにしてるんだよ」
「お前、SNSで嘘をついたのか。どっちの女をナンパしたんだよ?」
「……消防士だと危険な職業だから引くかなって思ったから、つい……。俺の彼女は右の子だけど、お前が消防士だと知ってるならバレたも同然だな。明日、謝らないと……」
「職業詐称だなんて、サイテーだな。山口茜ちゃんか。彼女も確かに可愛いけど……」
「けど……何だよ?」
剛が真顔で俺に問う。
勿論、雫が一番可愛いに決まってる。
「俺、やっぱ行くわ」
「えっ?行かないって言ったのに?」
「やっぱり行く。こいつに喝入れないとな。俺を無視した女は初めてだから」
「なんだか、よく分かんないけど、まっいいや。平田よりやっぱり親友のお前がいいし。じゃあ明日頼むからな。新宿の『レオン』って、カラオケ店予約してるから、午後五時に来てくれ」
「初デートがカラオケか?高校生じゃないんだから、もっとお洒落なレストランとか、バーにすればいいのに。相変わらずセンスないな」
「俺はお前みたいに慣れてないし、口下手だから、カラオケの方が彼女も楽しめると思ったんだよ」
「下心はないって、アピールしたつもりかよ。まっ、いいや。必ず行くから」
雫……待ってろよ。
お前が俺を避けたとしても、運命は俺に味方したんだ。
俺は病院を退院し一ヶ月もの間、雫からの電話を毎日待っていた。
「電話もないし、メールもしてこない。あいつ、連絡先を受け取ったくせに何を考えてんだよ」
携帯電話を片手に握り締め、一人でブツブツ文句を言っていると、桜田剛《さくらだつよし》が背後から声を掛けてきた。
「なぁ……保。明日休みだよな。暇か?」
「ん?明日なら暇だけど?」
「俺さ、明日、SNSで知り合った女性と会うんだよ。初デートなんだ」
「SNS?お前、そんなつまんないことしてるのか?」
「つまんなくないよ。結構楽しいぜ」
「SNSでのやり取りだけなんて、そんなのつまんないよ。やっぱり目の前にいる女と付き合わないとな。本名かどうかもわからないだろ」
「だから、彼女と明日会うんだよ。それでさ、彼女がもう一人連れて来るって言うから、お前付いてきてくれないか?」
「付き添いか。別にいいけど。俺が行くと、剛の彼女をお持ち帰りしたりして」
「な、な、なに言ってんだよ。そんなの絶対にダメだからな」
「初対面なんだろ。お前、俺に勝てる自信ある?」
剛が俺の顔をマジマジと見る。両手で自分の頭をボカボカと殴り大声で叫んだ。
「くそーっ!勝てねぇよ!」
「だろ?俺より平田を連れて行けば?平田なら、お前が勝てる。そうしろ」
平田も俺達と同期だが、身長も低く体形は小太り。剛の方が平田より高身長だし、顔は普通でも平田よりはかっこいいからな。
「彼女の画像があるんだよ。見る?彼女の友達も可愛いんだ」
剛は携帯電話を俺に差し出した。画面に写し出された二人の女性。
俺の視線は、その画像にくぎづけになる。
「雫……!?」
「えっ?お前、彼女のこと知ってるのか?」
「この二人、俺が入院していた病院の看護師だよ」
「う、うそっ!?なんだよ、見舞いに行けばよかったな。や、やばい。俺、区役所勤務の公務員ってことにしてるんだよ」
「お前、SNSで嘘をついたのか。どっちの女をナンパしたんだよ?」
「……消防士だと危険な職業だから引くかなって思ったから、つい……。俺の彼女は右の子だけど、お前が消防士だと知ってるならバレたも同然だな。明日、謝らないと……」
「職業詐称だなんて、サイテーだな。山口茜ちゃんか。彼女も確かに可愛いけど……」
「けど……何だよ?」
剛が真顔で俺に問う。
勿論、雫が一番可愛いに決まってる。
「俺、やっぱ行くわ」
「えっ?行かないって言ったのに?」
「やっぱり行く。こいつに喝入れないとな。俺を無視した女は初めてだから」
「なんだか、よく分かんないけど、まっいいや。平田よりやっぱり親友のお前がいいし。じゃあ明日頼むからな。新宿の『レオン』って、カラオケ店予約してるから、午後五時に来てくれ」
「初デートがカラオケか?高校生じゃないんだから、もっとお洒落なレストランとか、バーにすればいいのに。相変わらずセンスないな」
「俺はお前みたいに慣れてないし、口下手だから、カラオケの方が彼女も楽しめると思ったんだよ」
「下心はないって、アピールしたつもりかよ。まっ、いいや。必ず行くから」
雫……待ってろよ。
お前が俺を避けたとしても、運命は俺に味方したんだ。