――八年前――
 
 国内線の飛行機墜落事故。

 エンジントラブルで山麓に墜落し爆発炎上、二百九十九名もの乗客が死亡したあの悲惨な事故。生存者は僅か一名だった。

 あの日も……
 月の綺麗な夜だった。

 私は高校のキャンプに参加し、一人だけ飛行機には乗らなかった。

 両親と弟は、北海道の母の実家へ戻る予定だった。

 ――あの日……
 十六歳の私は、突然ひとりぼっちになった。

 夜になり降り出した雨が、炎上していた飛行機の火災を消火したけど、発見された遺体は無残なもので肉体の形は留めていなかった。

 山の麓にある閉校した小学校の広い体育館に並ぶいくつもの棺。鼻を突くなんとも言い難い異臭。僅かな遺品を頼りに肉親の遺体を探す。



 ――ここは地獄だ……。

 十六歳の私には、そう思わずにはいられなかった。