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「颯太、早く帰るぞ」
終礼を終えてすぐ、隣の席の川島くんが背の高い無愛想な男の子に声をかけられていた。
チラリと盗み見た表情の見えないその顔に心拍数を上げると、立ち上がった川島くんがこちらを向いて爽やかに微笑む。
「じゃあ、また明日ね。佐藤さん」
気さくに大きく手を振る彼は人柄の良さそうな笑顔を振り撒いて、教室を去っていく。
私はそんな彼の背中を横目で見ながら、窓辺から差し込む光に反射する真っ赤なランドセルを背負ってそそくさと教室をあとにした。
『あ』と声にならない呟きが口からこぼれる。足早に階段を降りたその先で、先程別れを告げてくれた彼がいた。
肩を並べて歩く友達に向けられた柔らかな笑顔が、重なる。
その瞬間胸がギュッと締め付けられたかのように苦しくなって、私はしばらくそこから動くことが出来なかった。