……空は、好き。
幼い頃から人と話すことが苦手だった私は、こうして空を見ることでちいさな幸せを噛み締めていた。
空は、いつ見ても綺麗で。
晴れ渡った空は心が晴れ晴れとするし、雨の日の曇った空から冷たい雫が頬を濡らすあの感じがなんだか好きだ。
だって、雨は隠してくれる。
心に降り積もる苦い記憶で涙を零しても、包み込んでくれる。
だから、好きだ。
誰にも言えない秘密は、秘密主義の雫に。
瞳を閉じて、胸に手を当てる。
少し前から発言権のなくなった自分の喉に力を込めてみるけど、音になり損ねた空気がその場に零れただけだった。
瞼を開いて、目を伏せて、ため息をひとつ。
力を失って定位置に戻った手を辿った先には、不器用に編まれたミサンガが結ばれていた。