「次は、AチームとCチーム、集合ー!」
審判席から体育教師の張りのある声が飛んできて、優花の隣に座っていた玲子は、ゆっくりと腰を上げた。
「次の試合、アタシのチームだから行くけど、優花、大丈夫?」
心配げな玲子の問いかけに、優花はどうにか口の端を上げ『平気だよ』と、両手を振った。
「ほら晃ちゃんも、それに、リュウくんもいるし」
優花の言葉に、リュウは穏やかな笑みで答え、晃一郎はウンウンと頷く。
「そーそー。心配ないから、行ってきな」
しっしっ! とばかりに、たった今まで玲子が座っていた場所にどっかりと腰を落ち着け、左手をひらひら振る晃一郎に、玲子は険のある鋭い視線を投げつける。
「あんたが居るから、心配なんでしょうが、枯れ草頭!」
「枯れ……草?」
とげとげしい玲子の態度と言い草が少し勘に触ったのか、晃一郎は眉間に浅い縦ジワを刻んだ。
「枯れ草が嫌なら、ヒヨコ頭でもいいけど。ヒヨコじゃ可愛すぎるでしょ。牛に反芻される枯れ草でじゅうぶんよ」
「……なんか村瀬、今日は、やけにつっかかるよな?」
「つっかかってんのは、そっちでしょう? 大体ね、今日のあんたオカシイよ? そもそも、その頭の金髪化。それからして、かなーりオカシイ!」
――やだ。なにこれ?
二人のやり取りを見ていた優花は、ドキリと身をこわばらせた。
玲子は、晃一郎にはなんとなく態度が冷たい。
今までもそう感じることはあったが、あくまで『そうなのかな?』と感じる程度であって、今のように正面切って露骨に批判するような言葉をぶつけることはなかった。
「お前なぁ、他人様に向かって『オカシイ』とか言っちゃいけないって、幼稚園の先生に教わらなかったか?」
「あらぁ? オカシイ人にオカシイって言って、何が悪いかな? アタシ、嘘やお世辞が嫌いな性分なのよね」
いつになく激しい舌戦を繰り広げる晃一郎と玲子の姿に、否が応でも優花の脳裏に浮かぶのは、先刻夢に見たパラレル・ワールドの二人の姿。