――誰が、なんですって?
ニコニコと穏やかな笑顔で言葉を続ける博士は、けっして冗談を言っているふうではない。
「ああ、まだ君は知らなかったんだね。御堂君には私の研究の助手をして貰っているんだが、彼は、優秀な研究者でもあり、第一線で活躍する新進気鋭の医師でもあるんだよ」
「は……?」
「特にリハビリ関係には強いから、安心して任せると良いよ」
「はい!?」
――な、なんで中学生が、研究助手でお医者様っ!?
瀕死の錦鯉のように、口をあんぐりと開けたまま固まっている優花に、優しい博士が説明してくれた。
基本的に同じような世界のパラレルワールドでも、まったく同じわけではなく、少しずつ違いがあり、この世界は優花の居た世界よりも医療技術とESPの開発が進んだ世界のようだ。
ESPと言うのは、超能力のことで、ESPを使う人をESPERと呼ぶ。
『少しずつ違う』部分には、人の年齢も含まれていて、なんとこの世界の晃一郎は今十八歳だという。
――道理で、若干、視線の位置が上だと思った。
ここの世界では十歳で、優花の居た世界の大学程度までの義務教育が終わり、その後、本人の希望及び適性に合わせて職業に就くのだそうだ。
晃一郎は、十二歳で医師免許を取得後、免許取得の際に書いた論文が認められ、是非にと乞われてこの国営の研究所にやってきた有望株。
おまけに、この世界で五人しかいない貴重なESP特Aというランクの能力者なので、『SA特別国家公務員』と言うかなり凄い肩書を持っているのだとか。
つまり、国きってのエスパーで若手のホープ、期待の星!
それが、ここの御堂晃一郎。
――じ、冗談でしょ?
なんなの、このスーパーマンぶりはっ!?――
もう、呆然とするしかない。
「ああ、俺の事は、御堂先生って呼んでくれていいから、如月優花さん」
ニンマリと、悪魔がほくそ笑んでいる。
これを悪夢と言わず、何と言うのか。