――ああ、もう、緊張しちゃうなぁ。

 などと左半身に神経を集中させながら、祖母特製の甘いだし巻き卵をおちょぼ口でモギュモギュ飲み込んでいたら、「それにしても、急な事で大変ねぇ、晃一郎君……」と、食後のお茶の用意を始めた祖母が、とても気の毒そうに、ため息混じりのつぶやきを漏らした。

 晃一郎が今、こうして如月家で朝食を食べている理由。

 それは昨夜の夕方、晃一郎の父方の祖父、御堂家の本家のお祖父さんが、亡くなったからだった。

 末息子である晃一郎の父とその嫁である母は、取るものも取りあえず、夜のうちに三つばかり隣の県にある本家へ車で向かい、外孫である晃一郎は、金曜日の今日学校を終えてから明後日・葬儀当日に間に合うように、電車で後を追うことになっているのだとか。

 一緒に行った方が楽なんじゃないかと思って優花が尋ねたら、晃一郎の祖父には七人の子供がいて、外孫まで一度に集結してしまうと収拾がつかなくなるので、後から一人で来られる年齢の孫たちは皆、置いてけぼりをくったのだと、晃一郎はカラカラと笑った。

 ちなみに如月家のシャワーを使っていたのは、親戚に不幸があったこととは関係なく、たまたま運悪く御堂家のボイラーが故障していたからだそうだ。

 困ったときのご近所さん。
 いきなりセミヌード攻撃は驚いたけれど、事情が事情なだけに怒るわけにはいかない。

 自分が着替え中で晃一郎が後から入ってきたのだったらこんな悠長なことは言っていられないが、立場が反対じゃなかったことを神様に感謝しようと、優花は前向きに思うことにした。

 何事も、気の持ちようだ。