とにかく、美加ちゃんには寝室で朝まで仮眠を取ってもらい、無理をさせてしまうけれど、明日は一人で通常通り出勤と言う形をとることにした。

 課長は、病欠。

 私は、『親戚に急なお葬式が出来た』とでも適当に理由をつけて……。

 まあ、所謂、ズル休みだ。

 そう段取りが決まれば、いよいよ、病人看護開始。

 男物の着替えは用意することができないから、上着は、ネクタイを外してワイシャツを脱がせ、少し考えてからスラックスはそのままでベルトだけを外した。

 さすがに、『全部ひん剥いて下着姿に』、と言うのはいくら元恋人同士の仲といえどためらわれた。

 この状態で、汗ばんだ身体を濡れタオルで拭いてから、熱がこもらないように薄手のタオルケットのみを上に掛けて、冷凍庫で常備していた冷却枕と、風呂桶に汲んだ氷水に浸したタオルを定期的に交換して頭を冷やす。

 後、出来ることは――。

 高熱を発している時は、とにかく、こまめな水分補給。

 たぶん、これが一番肝心な事のはず。

「課長、スポーツ飲料ですけど、少し飲めますか?」

 コンビニで氷と一緒に調達してきた、ペットボトル入りのスポーツ飲料の蓋を開けて、昏々と眠る課長に枕元で声をかける。

「う……ん?」

 課長は薄く目を開けて一応反応を見せたものの、やはり辛いのか、すぐにその瞳は固く閉じられてしまった。

 やっぱり、だめか……。

「課長、少しでもいから、飲んでください」

「……」

 再度、声を掛けるけど、かんばしい反応は返って来ない。