飯島さんが私を連れて行ってくれたのは、県北にある県で唯一存在する『遊園地』だった。
規模はさほど大きくなく、動物園と併設されている老舗のテーマパークだ。
今日は、折しも土曜日。
それも晴天のお昼時となれば、親子連れやカップルで大賑わい――、かと思いきや、不景気な世情を反映してかそれほど人出は多くなく、どこかのんびりとした空気が漂っていた。
遊園地内の軽食スタンドでハンバーガーセットを買い込み、パラソル付のテーブルセットの一つに私と飯島さんは陣取った。
周りを見渡せば、幼い子供連れの親子が、賑やかにテーブルを囲んでいる姿が目に入る。
楽しげにじゃれあう子供たちと、それを見守る両親の慈愛に満ちた笑顔が、脳裏に懐かしい思い出を甦らせる。
私が小さい頃。
まだ父が健在で、母は忙しく仕事に追われることもない専業主婦だったあの頃。
あんな風に家族水入らずで、遊園地に連れてきてもらったことがある。
楽しくて温かくて、そして幾ばくかの切なさを内包した懐かしい記憶――。
「しかし、本当に初めてだったんですねー高橋さん」
愉快そうな飯島さんの声に、ハッと現実に引き戻される。
「あ、あはははは……」
ジェットコースターから、ヘロヘロの体で飯島さんに抱えられるように降りてきたのは、ついさっき。
まだ、足元がフワフワしている。