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 それから一週間程経ち、昼休み。先週やると決めた図書委員の初仕事の日を迎える事になった。図書室は本校舎とは別の西校舎にある。西校舎には美術室や音楽室もあるが、その中でも図書室はその西校舎の大部分を占める程の広さを有している。なお、最初に僕は……とは言ったが今僕は一人ではない。もう一人いる。そして、そのもう一人とは……。
「すごい! いつ見てもいっぱい本があるね、うちの高校!」
 楠野さんだった。うるさくならない程度に感嘆の声を漏らす彼女を見て、僕はなんだか複雑な気分に駆られる。その後すんなりと図書委員は僕と、楠野さんの2人でやる事になったのだけど、僕はどうも楠野さんは理由があって図書委員に立候補したと思う。それは、僕が図書委員に立候補した直後に彼女は手を挙げた事がそう思う一番の理由だ。ただの偶然というには言い訳がましく思える程、彼女は僕が立候補した直後に初めて手を挙げたのだ。
 まさか、僕と仲良くしたいから? そんな訳ないと思いつつ、僕は質問をする事にした。
「そういえば、さ」
「んー? どうしたの?」
 楠野さんがこちらに注目してくる。僕はコホンと咳を鳴らして改めて質問をする。
「何で図書委員に立候補しようと思ったの?」
 もちろん、この質問で。どうしても気になった事なのだ。もし彼女が気に病むような事だったら言わなくて大丈夫、とフォローをすればいい。更に言うと、楠野さんはそう言われて少し悩んでいるみたいだから、無理に言わなくても良いとフォローをすれば、
「昨日助けてくれた事のお礼かな」