けれど、そんな時間が終わったのはもうすぐ今日の学校の予定が終わりであるクラス委員の仕事決めの時だった。僕は図書委員を選ぶタイミングで誰も手を挙げなかったのを確認すると、手を挙げて図書委員行きますと伝えた。
 それを聞いた、担任の先生は僕の名前を黒板に書き込む。そして、他に誰かいないかと聞く。当然、誰も手を挙げないと思っていた。
 その時だった。
「はい」
 手を挙げた人がいた。
 僕はその人物に驚いた。何故なら、
「楠野、やってくれるか?」
「やります」
 それが、楠野さんだったからだ。
 それと同時にクラス中がざわつく。そんな中で楠野さんが僕の方を向いて、笑顔を見せた後に着席をした。
 この時の僕は知らなかったけれど、楠野さんは学校中でも一番よく話題になる程有名な人物であった。僕は有名であることは知っていても、そこまで有名な人と思わず、だからあの時クラス中がざわついた理由を理解できなかったのだけれども。
 とにかく、楠野さんは僕が図書委員に立候補した直後のタイミングで自分も図書委員に立候補してきたのは何か意図があっての事だろうか。
 僕にはそれがわからない。
 けれど、これが僕と彼女の交流の始まりだなんて知る由もなかったのだから。