山道を登るのは簡単では無かった。自転車の時もそこそこ苦労して上った山道なのだから、当然だろう。僕は自らの足で整備された山道を歩き続けていた。山道の端に設置されたガードレール越しから見える景色は真っ暗でほとんど良く見えない。
 けれど、この山道は不自然に光が照らされており、なんとか歩く事ができていた。だから、ちょっとした荷物しか持っていない僕でも本来なら真っ暗であろうこの山道を容易く登っていく事ができていたのだ。
 前行った時はこんな道ではなかった。確かあの時は夕方だったとはいえ、道はやや暗くてよく見えない状態だった。だから、今のこの状況は不自然だった。しかし、ここには間違いなくその現象を生み出した何かがあるのだとわかる。
 それが、
「……ここだ」
 前に行った時に見かけたあの一軒家。道中にしっかりと整地された場所に建てられたたった一つだけの家。そこには誰も住んでいないのは変わらずだ。しかし、今はこの一軒家には違う意味を持っていた。
 この一軒家全体が激しい光に包み込まれていた。
 そうとしか表現することができないぐらいの規模だった。それほどこの光の激しさがわかるそれは、間違いなくこの不自然な光を生み出している場所だ。
 僕は、コンクリートの壁をよじ登って家の庭の中に入った。普通に考えたら、これは犯罪なのだけれど、今はそんな事を考慮する余裕なんてない。僕は急いで家の周りを捜索する。すると、あったではないか。
 光の発生源である、『世界の穴』が。
 そこは、光が浮き上がっていた。くねってくねって、光が混ざり合っていた。そう見えた。
 僕はこの穴の中に入ろうと試みる。