実際、目の前にいる僕が今、彼女がどうなっているのかの術を確認できない。けれど、僕の手は扉を開けようと動かす。すると、
「ちょっと君」
 避難所の方から男性特有の低い声がした。すると、使っていない片腕が強い力に引っ張られて体も同時に持っていかれる。
「今、外は危ない。出るのはあの破壊現象が止まってからだ」
 そう言うと、僕を引っ張り戻した男の人はそう言って避難所の人混みの中に消えて行った。僕はただ、何で邪魔をしてきたのか一瞬理解ができなかった。
 スマートフォンをポケットから取り出して開く。
 けれど、ネットワークは圏外の状態だった。

  *

 あの破壊現象が止まっているのかは未だに分からなかった。それは、夜になっても変わらなかった。夜は皆ゆっくり寝静まっている。僕はその中でこっそりとその眠る人々の合間を通って入り口へとゆっくり歩いた。
 入り口の扉は厳重に締められている。僕は扉を調べてみる事にした。この扉は普通に開ける事ができた。ただし、扉そのものは強固で壊すのは難しそうな程の重さと硬さだった。開けるのに時間がかかった。
 そうして、外に出て最初に見えた景色は、
 地獄絵図だった。
 舞い上がっている煙や埃などの合間から見えるのは、中途半端に壊され、原型を留める建造物、中途半端に曲がった電柱は所々焼け焦げた跡が見え、軒を連ねていた一軒家は一部分が壊れただけのものもあれば、なにもかも焼けて燃えかすだけになる程焼かれた家もあった。
 それだけでも外で何かあったのかを全て物語っている。
 そして、その焼け焦げた家の近くにあったのは。
「……嘘だ」