彼女はこちらを見るなり、明らかに警戒の素振りを見せてきた。一体何でなのか、ちっともわからない。
「彼、今年から同じクラスの安曇くんね。あ、安曇くん。こっちは片桐筑音ちゃん。私の昔からの親友なんだけど――」
「美樹。あいつとなんか妙に仲良さそうだけど?」
 こちらに対する呼び名が妙に刺々しい。楠野さんはそんな所に気を留めず、話を続ける。
「うん! 結構話盛り上がっちゃって気が合いそうなんだよね~」
「へえ……」
 そう言いながら、こちらをジッと睨み付けてくる片桐さんの顔はかなりの迫力があって、僕は気圧されてしまう。というか、何で筑音さんは僕に対してこんなに警戒の色を隠さないのだろう。
 ……そんな理由を考えていても仕方ないと結論に至らせて、僕は僕の方で用事を済ませるために楠野さんにそろそろ用事があるから帰っても大丈夫かと聞いてみた。楠野さんは理解を示した様で、ここから先は筑音ちゃんがいるから大丈夫だと言っていた。
 そして、別れ際に楠野さんはまた学校で、と叫んだのを最後に二人で僕とは真逆の方向に歩き去ってしまって行った。それにしても、今日は疲れる日だった。さっさと帰ろうと僕は駐輪場まで向かった。
 楠野さんに道案内した時間を含めて大体3時間ぐらいいただろう。幸い、ここの駐輪場は料金がかかる仕様がないのでそのままシームレスに出る事ができた。僕は自転車のペダルを漕いで真っすぐに家まで直行した。
 そうして、僕がペダルを漕いでいると、どこか一部の一帯から何か光っているのを目撃する。
「あの光、何だろう……」
 そう呟かずにはいられなかった。今僕がいる場所から山の方に何か光が漏れ出ている様な気がするのだ。気になった僕は進路を山の方に変更してその光の正体を探る事にした。