「……彼女の言ってる事が本当かわからない。けど、さっきから連絡が通じないんだ」
 彼女と連絡が取れない、という事だった。
「もしかして、あんたもなの……?」
「という事は、片桐さんも」
 うん、と片桐さんは頷いた。やっぱりだ。片桐さんも楠野さんと連絡が付かないからこの街に居たんだ。
「けど、どうして? やっぱりあんたが言う様に美樹が音信不通なのって世界少女関連なの?」
 片桐さんはいつもの彼女からはなかなか聞く事のない弱音を今、吐いていた。それもそうだろう。こんな突拍子もない事実を受け入れるにはなかなか時間がかかると思う。それは、僕も同じだ。けれど、けれど、だからこそ行かないといけない。
「……こんなところで弱音吐いても仕方ないよ。行こう、楠野さんの家に」
「う、うん」
 片桐さんは素直に応じて、楠野さんの家がどこにあるか話し始めた。ここから一応徒歩で行けるくらいの距離にあるとの事だった。この駅の周辺の近くにある住宅街で楠野さんは家族と暮らしているという事だった。そして、僕たちは楠野さんの家に行く……その前に一応の確認をすることにした。
「家族には、僕が楠野さんから世界少女の事を聞かされた事、内緒にしよう」
「な、なんで?」
「もしかしたら、重大過ぎる秘密かもしれない。とりあえず隠した方がいいかも」
「わ、わかった」
 こういう時になると、素直に応じてくれる。いつもの刺々しい態度は一体なんだと思うぐらいだった。けど、今はその事を考えるのは無駄だ。今、一番優先する事は楠野さんの家まで行く事。それは、片桐さんも同じ事を思っているだろう。
 僕は片桐さんに案内される形で楠野さんの家まで歩き始めた。