「私、「……」から来ているからここあんまり行った事ないんだよね」
 楠野さんはこう言っていた。僕は麦茶を飲み終えると、今度はしっかりと準備をして外出した。行き先はここから3駅離れた所だ。

 電車は通勤ラッシュではないためか、かなり空いていた。僕は電車の隅っこに座ってじっくりと次の駅を待っていた。駅員さんがもうすぐ次の駅に着くとアナウンスして、数十秒程経って、電車は駅のホームに止まった。僕は駅のホームに降りる。電車の中はクーラーが効いていたので、外がかなり暑く感じる。もうすぐ昼という事もあり、尚更だ。
 僕は、この駅のホームから降りる場所が無いかを探す。すると、目線の先にエスカレーターがあったので、そこまで少し速足で駆けて下りのエスカレーターに乗った。
 改札を出て駅の外に出る。駅の周りはそこそこ高いビル等が建ち並んでいて、地方都市の印象が強い。ビルから目を下ろすと、一体何のためにここに来たのかわからない軽い服装をした人や、明らかに仕事の休憩時間で外に出た人等様々な人がこの駅に集うかのようにいる。それらの人々も、この暑さには参ってるのかヘトヘトの人も中にはいた。
 僕は、ここが楠野さんの言っていたこの最寄りの駅で一体何をしたらいいだろう。とりあえず、来たらいるかなという感覚で来てしまったので、ここからどうしたらいいのかがわからない。どうしたら、いいのだろう。
「……あ」
 しばらく周りをうろちょろとしていたら、見覚えのある後ろ姿を見つけた。明らかに楠野さんとは違ったか、これはもしかしたら……そう思った僕は思いっきり大声を上げてその名前もとい苗字を呼ぶ。
「片桐さん!」
 すると、呼ばれた彼女はすぐに反応した。そして、こちらに振り向いてやっとそれが片桐さんだとわかった。