『世界の主は正体こそ一般人には知られてはいないものの、毎年一人の生贄を用意しなければ世界そのものが破滅するという事が過去に実証されている。そのために世界の主の声が聞こえた者は世界の主によってこの世から消滅しなければならない』
『世界少女が選ばれる条件は先ほどの通り、世界の主からリンクされる事なのだが、何故か20歳以下の女性にしか起きない現象である』
 書けば書く程、精神を病みそうになる程現実感が無くて、それでも現実の事だった。もう、自分でもどう考えているのかわからないくらいの事が起きていて、混乱しているのだろう。僕はどうしたらいい? 世界少女って一体何? 世界の主というのは何? もうここが現実なのかどうかなのかすら理解できない程ノートに書き殴った自分の字の光景が何度も繰り返されている。
 もはや、そこにリアリティなんてものを求めるのは滑稽なのかもしれない。そもそも、リアリティどうこうという問題ではない。これは、現実だ。
『儀式が行われるのは八月十七日』
 つまり、後一カ月経ったら。
 彼女、楠野美樹はこの世から消滅する。

  *

 気が付いたら、朝になっていた。僕は椅子に座ったまま机に頭を打ち付ける様に寝ていたようだった。顔を起こすと、ちょっとした頭痛が来た。しばらくぼっとしていたら、痛みは無くなった。そして、目線は机の上にあったノートに移った。
 そこには、昨日殴り書きした文字がノートの片隅に書かれていた。僕はそれを見て、心の奥がジーンと痛む。
 楠野さんが世界少女というのは事実なのか。彼女のついた嘘なのか。それを確かめるためには外に行くしかなかった。僕は急いで部屋を出た。ドアが限界まで開いたのか、ガンッという音がなる。そんな事はお構いなしに僕は階段を駆け下りる。