駅前まで着いた僕は隅っこでただ、茫然と立っていた。周りはそんな事もお構いなしに今日の花火大会の感想や、ちょっとした笑い話で盛り上がっている。中にはまっすぐと駅のホームへ行く人もいる。それは、間違いなく祭りが終わった後に見る当たり前な出来事なのだと。
 けれど、今はその事実が受け入れられなかった。僕は逃げる様に駅のホームへと走り出した。

 家に帰ると、母が「おかえり」と声を出してきた。僕はそれに対して「ただいま」と精一杯吐き出して返した。母は僕の態度を一切怪しまなかった。僕はリビングに入る。そこで僕は今、彼女が去り際に言っていたあの単語がテレビのニュースに出ていた。
 ニュースでやっていたのは世界少女の特集だった。ドキュメンタリーと言ってもいいだろう。僕はそのニュースを茫然と母と共に眺めていた。ニュースは次々と流れる様に世界少女に関する情報を流していた。そして、その情報が僕に段々明かされる度に精神が蝕まれた様な感覚に襲われた。
 ニュースが世界少女の特集を終えた辺りでは流石に母も僕の異常に気付いたのか、「大丈夫? 花火大会に行った時、友達と何かあったの?」と心配をかけてきた。僕は大丈夫とだけ返して、自分の部屋に移動する事にした。
 僕は部屋に入るなり、急いでノートとシャーペンを用意して、真っ白いノートの紙に殴る様にスラスラとさっきのニュースで流れていた事を書き記した。
『世界少女は、毎年20歳以下の女性から選ばれる』
『この世界少女を決める理由は、非現実的であるが、この世界には世界の主という地球を動かすものが存在しており、この世界の主を動かし続けるには世界の主とリンクする20歳以下の女性が選ばれる』