――さようなら
 次に彼女から告げられた言葉だった。そうして、彼女は公園から出て行った。僕はその場で金縛りにあった感覚に陥り、咄嗟に動けず、彼女を止める事はできなかった。花火は未だに華やかに夜空を色づくしたいた。それは、とても綺麗で、残酷だった。
 ――花火、綺麗だったね。
 ――来年もまた来よう!
 ――いやあ、絶景の絶景でしたなぁ!
 そんな感じで皆が楽しそうに花火大会の感想を述べていた。それらが雑音になって一種の生活音……特別な日の賑わいを醸し出していた。けれど、僕はその輪の中に入っていない。ただ、一人でその中に入っていた。とても浮いていたけれど、そんな事を気にする事ができない程、彼女の思いもよらぬ事実が未だに頭の中で反響してくる。
『わたしね、世界少女なんだよ』
 そう彼女は公園から去る前に告げた。僕は彼女が去るのを止める事ができなかった。花火はそれでも遠慮なく打ち上がり続けて、そして。
 それは突然、終わりを告げた。
 僕はそれを見届けて、今大勢の人と帰り道を歩いていた。けれど、行き道と決定的に違う事があった。それは、隣に彼女が居なかった事だ。傍から見たら、花火大会に見に行ったけれど振られたのか、程度の感想しかわかないだろう。けれど、僕たちの間では振られたとか以上の次元だったかもしれない。
 ――彼女が、世界少女だった。
 その衝撃の事実は彼女から告げられた。嘘だ、そんなの、ただのジョークだという事実を信じたくなるほどの告げられたその事実はとても嫌なものがあった。