彼女からはそう返ってきた。確かにどうして誘ってきたかの事情を知らない彼女からしたら行けるというのに、本当に行って大丈夫なのかと聞かれたら、ちょっとヘンだと答えるだろう。
 これは、楠野さんのために僕がやった事だ。だから、僕は彼女の本心を裏切る様な事をしてはならないという一種の使命感を持っていた。
 そんな使命感は、他人から見たらその程度で? とか思うかもしれない。けれど、僕にはその使命感を持つことは大切な事なのだ。誰かに何かを言われようと僕には関係ないという意志を持って彼女の気持ちを晴れさせてあげる事。それが僕のしてあげたい彼女のためにする事だった。
 それから何も無かった夏休みの二日目を跨いで七月二十一日。
 その日はとても快晴だった。花火が問題なく打ち上がれるその天気に一息付く程安心した。昨日の夕方にやっていた天気予報が当たってくれた事が今一番有り難い事だった。その日は家でゆっくりと過ごして今日のプランをしっかり考えていた。彼女は一体どういうのが好きなのだろう。服はどうしたらいいのだろう。出会った時にどんな言葉を掛けよう。そんな事ばかり考えた。色々考えた事を紙にまとめたりもした。時間が経てば経つほど、それは少しずつ確かに心がハラハラしてきた。
 多分、それは緊張しているからだろう。彼女を楽しませられるかどうか、今日にかかっている面もあるのだから、僕がしっかりしないといけないという側面もあるので、それがプレッシャーになっているのかもしれない。
 ふと、携帯を開いてみる。そこには楠野さんからメッセージがやってきていた。
『そろそろ時間だね!』