それを横目で眺める僕。正直、彼女に対しては苦手意識があるのでどうも話しかけづらかった。周りでは子ども数人が楽しそうに鬼ごっこしていたりボールを使って遊んでいたり、それを親が楽しそうに眺めていたりと、どちらかと言えば楽しそうな空気感を持っているだけあってこの二人の空気がピリピリしているのはかなりの場違いだ。
 そういった事もあって彼女から何か話しかけてくれる事を望んだ。しかし、中々話が出てこない。一体なにを言われるのか。ただ、無言だった。
「あんたさ……」
 そして、ようやく片桐さんは重い口を上げた。
「最近、美樹が元気ないように見えてるでしょ」
 一瞬視界が白くなった。
 何故、彼女がそんな事をと言う前に彼女が言いだしてきた。
「確かに、美樹最近元気ない。元気に振る舞っているけど、元気が無いの」
 そこからは完全に片桐さんの独擅場だった。
 6月に入ってから楠野さんに活気がなくなり始めた事。日が経つ事にどんどん活気が無くなっている事、それが一体何故なのかわからない。それなら僕に聞いてみた方が早いと言って僕に話しかけてきたのだという。
「どうなのよ。実際の所」
「……わからない」
 それが本心だった。紛れもなく、偽りもない純粋な想いで吐露した。けれど、片桐さんは何か納得していない。
「な、なんで! 最近私より長くいるあんたが分からないって?」
 本心から納得がいかないと言わんばかりの剣幕でこちらを責めている様にも思えた。それは、片桐さんが楠野さんの親友として心配している側面もある。それはあると思う。