それ程までにあの人は彼女にとって特別なのかもしれない。
 多分、そうなのだろう。
 僕は楠野さんの様子をしばらく見届けた後、元の定位置に戻って本の整理を済ませた後、貸し出しコーナーの担当を交代して今度は楠野さんが本の確認をする事になった。この高校は比較的図書室のスペースが広いので、結構整理は大変だ。最初の頃は二人でやっている事が多かったけど、最近では二人で交互にやって整理を進めている感じだ。幸いここの図書室はこの広さに相応しいぐらいには人が時々やってきて、本の貸し出しや返却をしてくれるので、そこそこ大変だ。
 そうして図書委員の仕事をしていたら、チャイムが鳴ったために僕たちは図書室を締めて職員室に図書室の鍵を持っていった。

 それから、放課後になるまではあっという間だった。今日も僕はいつも通り、人が減っているのを見計らって下校を始めた。しかし、今回の下校はいつもと違った事があった。
「あ」
「……あ」
 彼女と鉢合わせした。そして、その彼女とは楠野さんではなく……。
「か、片桐さん……」
 そう。片桐さんだった。いつもこちらに対して刺々しい態度で接してくるので正直苦手だった。もしかしたら、僕が楠野さんと仲が良い事しているのが気に食わないのだろう。
「な、なんであんた……」
 そう言った途端口を閉じた。
 一体どんな事を言われるのか心の中で少しびくびくとしている。
 しかし、彼女から言われた事は意外な言葉だった
「ちょっとそこの公園で話しましょう。あのベンチに座るから自転車は横に置いて」
 そうして、僕たちはベンチで座る事になった。
 けれど、片桐さんは何も言わない。