だから、誘ったのに何を言っているんだと思われるかもしれないけれど、やっぱり僕は彼女があれだけ微妙な反応をしていたのを見て、なんで行くって言ったんだろうとやはり疑問を抱いていた。僕が誘ってきたからと言われたらそれが一番の答えになってしまうのかもしれないけれど……。
 けれど、やはり彼女の態度には何か原因があるのだろうとも伝わってきた。
「……それじゃ、他の皆には言わないでくれる?」
「……何で?」
 正直理由は言いづらかった。けれど、この話を聞きつけたら間違いなく誰かが問い詰めてくるに違いないからだ。相手は、クラス、同学年どころか、学校全体で話題性の高い彼女……楠野さんなのだ。もし、僕が花火大会に誘ったなんて話題にされたら一体どうなるか。安易に想像出来る事だ。
「まあ、安曇くんがそうして欲しいならそうするね」
 理由を無理に聞かず、楠野さんは自分の中で納得したようだ。けれど、僕は彼女に無理をさせてしまったのかもしれない。それは、それで逆に自分が負担をかけてしまった様で、本末転倒だ。これじゃあ彼女を元気付けるなんてかっこいい事を言っている場合ではない。
「あ、あの」
 その時、音が鳴り響く。
「あ、チャイム鳴っちゃったみたい。それじゃ、今月の二十一日ね! あ、私ちょっと筑音ちゃんに呼ばれてて、先に帰るからごめん! よろしく!」