楠野さんはどう反応してくるだろう。意気揚々と乗ってくるのか、思わず少し嫌そうな表情を浮かべるのか、それとも行きたいと意志表示しつつも、けれど行けないと謝ってくるのか。
 結果から言うと、それらには当てはまらなかった。
「……う~ん、どうだろ……」
 なんとも微妙な反応だった。それは、意気揚々と乗ってきてもいないし、嫌そうな顔を浮かべてもいないし、はっきりと断っても来ない。本当に微妙な反応だった。
 最近、楠野さんの元気が無いなと思ってから、大体こういった反応ばかりだ。どうしてなのかはさっぱり思い浮かばない。けれど彼女が何とも言えないという顔をして、僕は彼女を困らせているのだとなんとなく気づいてしまった。
「ご、ごめん。無理ならいいんだ」
「あ、いや、ちょっと待って!」
 話を切り上げようとする僕を制止して、楠野さんは答える。
「行く! 折角誘ってきてくれたわけだし! その日は私何もないから?」
「え、でも……」
「いいの。私、大丈夫だから」
 そう、私は元気です! と楠野さんはアピールをしてくる。そのアピールの仕方は両腕をパッと開くというものだ。けれど、僕の目からは明らかに強がっている様にしか見えなかった。
 一体何かあったんだろうか。
「そっか。楠野さんが言うなら……それで」
「うん。そうしといて」
 僕は楠野さんに余計な心配を抱かせない様に誤魔化すしかなかった。けれど、僕はなんとなく伝わる。あの日からなんだか彼女の元気はまるで楠野さん自信が無理やり作っているもので、本当は心から落ち込む事があったのではないのかという事があるのかもしれない。