政府は何も話してはいないが、『世界少女』として役割を全うした少女は死んでしまうという噂は立っていた。むしろ、それしかないという話だった。
 今までの『世界少女』全員が消息不明になっているのだ。それは、間違いないだろう。そう言った事を前提として、政府の対応を非難している人もいるくらいだ。だとしたら、何故『世界少女』に関する事を政府は何故、ほとんど話さないのだろう。謎は深い。

 翌日。気持ちは落ち着かないまま一週間の学校の最初の日が始まる。
「よお、一郎」
 朝、教室に入りすぐ席に着くなり声を掛けられた。一郎は僕の下の名前だ。
 そして、人がまだ少ない教室の中で誰が僕に声を掛けてきたのかは見なくても声でわかっていた。
「……何、多田」
「なんだよ、そのまたみたいな反応は」
 そう語る多田はちっとも不機嫌そうではなく……むしろ上機嫌な様子だった。
 同じクラスになってから毎日の様にこちらに話しかけるようになってから何だか落ち着きがない。けれども多田は、そんなに邪見するほど何か突っかかってくるわけではない。
「それで、今日は?」
「まあ、お前が聞きたいか聞きたくないかで決めるわけだが……」
「それじゃあ、とりあえず聞く」
 意外と素直に聞くな、と言って多田は笑う。まあ、聞きたくないか聞きたいかでいえばどっちでもないので、何も考えずにそう言ったのだけど。
「一郎、最近楠野さんとはどうなんだ」
 突然そんな事を聞きだしてきたのだから、一瞬頭が真っ白になってしまった。