コンドラはゆっくりと下降していて、どんどん外の街並みが見えなくなっていくのがわかっていた。ということは、観覧車にいる時間は本当にあっという間に感じた。

 楠野さんは一人でも歩けると言って、僕の横を歩いた。けれど、顔には明らかに元気がなかった。それから、僕たちは街中でそろそろ帰ろうと結論を出して、別れる事になった。
 僕は帰りの電車で先ほどのニュースを開く。
 そのニュースについたコメントは多数がかなり過激的なコメントを残しているのが大半だった。
 僕はしばらくコメントを見た後、ページを切り替えて『世界少女』に関するニュースを調べる事にする。その中に一つ気になった記事を見つけた。それを開いて詳しい事を確認する。

 今年の『世界少女』が役割放棄未遂。

 簡単に言えばそんな内容だった。それも5年前の内容だったので、かなり古い情報ではあった。
 けれど、一つ注目したかった事は、この年の『世界少女』は僕たちが通っている高校生であったという事だった。彼女の名前は書いていなかったが、一体誰なのだろう。
 ……もしかしたら、ちょっと調べてみたら彼女の名前が出てくるかもしれない。
 そう思ってまた調べ直す。すると、そこには割と事細やかに書かれた5年前の『世界少女』に関する記事を見つける事ができた。
 その記事によると、その年の『世界少女』は藤原緑という当時高校3年生の女性だったらしい。彼女は当時の恋人である少年Aと逃走の計画を企て、逃げ出そうとしていたらしい。
 しかし、少しのミスが原因でバレて恋人の彼は逮捕、藤原緑は『世界少女』としての役割を遂行したらしい。
 けれど、その後の彼女の消息はわかっていないそうだ。
 『世界少女』とは謎が多い。……まさかそのまま亡くなった?