そして、『世界少女』の制度に対する批判、肯定的意見……それらで入り乱れているのが、ニュースの文末、ニュースについたコメントで分かる。
 僕は、『世界少女』というものをあの日の図書室で知った。
 それから、忘れていたけれどこのニュースを見て、『世界少女』というものはこの世に本当に存在する事を知る。それは、架空の物だとなんとなくそう思っていた、僕の気持ちの弱さから実在をなんとなく受け入れられていなかったかもしれない。けれど、そんなものがあるなんて誰も信じないと思う。
 非現実的だ。
「……大丈夫、ただのニュースが通知で来ただけだから」
「……本当に?」
 やはり、疑われてしまう。それは、ここまでの間が長かったから彼女は何かしら、察していたのだろう。疑り深くこちらの様子を窺っていた。
「……ちょっと、世界少女が決まったって内容なんだけど、」
「世界少女が決まった……?」
 僕が見たニュースの事を話し始めると、彼女は突然僕の話を遮って、呟いた。すると、楠野さんはその一瞬から明らかに挙動不審になっていた。
 じんわりと汗が少しずつ滲み出ていた。何かに怯える様にガタガタと震えていた。
「く、楠野さん……?」
 僕は思わず彼女に駆け寄った。彼女の様子が突然おかしくなって、慌てていた。それぐらい、彼女は明らかにおかしくなっていた。
「……もう、そんな時期なんだね」
 楠野さんは顔を上げて、僕の顔を見ると微笑んだ。無理やりに。
 僕は一体彼女が何故その言葉に反応して怯えていたのかわからなかった。けれど、彼女は『世界少女』に対して何かがあるのかもしれない。そうと考えた。
 けれど、それ以上は深く考えなかった。
 もしそれ以上深く考えたら、嫌な結論にしか達しなかった。