前者はともかく、僕は後者だったとしても、それは胸を突き破る様な衝撃を体験するだろう。今まで、特別誰かと深い関係になった事の無い僕に対して、何故彼女はそんな事を言っていたのか、一切理解できない。
「……どうなんだろ……大体そんな感じなんだけど……ちょっと違うかもしれないし」
 楠野さんはこちらが何も言わない事を心配したのか、とぎれとぎれになりつつも自分の言った事にフォローを入れる。けれど、僕はどうしようもなくただ何も言えないままだった。
 その時、何かの振動音が聞こえる。
 僕はその振動音の正体にすぐ気づく。これは、僕のスマートフォンから鳴ったものだとわかった。
「……ちょっと待って」
 そう言って、僕はスマートフォンの画面を開く。正直、このタイミングで携帯から通知がなったのは、話を変えるには最適だったかもしれない。けれど、通知の正体を知った瞬間、ドキリと鼓動が鳴った。
 通知にやってきた事は、『今年の世界少女が決まる』という題名から始まるニュースだった。
「どうしたの?」
 楠野さんの心配する声が遠く聞こえた。僕は無意識にそのニュースのページに飛ぶ。そこに書かれてあった事は、世界少女というものに関する事だ。

 『世界少女』とは、毎年行われる儀式の代表人物であり、その名の通り、対象になるのは女性だけ。この世界には主と呼ばれる存在がおり、世界少女はその主に捧げる生贄。

 ニュースに簡潔に記されていた。そして、その後に続く文はこの『世界少女』の存在に対する賛否、議論。果たして『世界少女』は必要なのか、『世界少女』の存在する理由は一体何なのか、そもそも何故『世界少女』というものが生まれたのか。