少しずつ、少しずつ、動いでいくコンドラの中で僕はどうしようかと頭の中でめぐり合わせている。ここはそんなに悩まなくてもいいと言った方がいいと思ってはいたが、彼女が折角答えてくれるのを邪魔しちゃ悪いとも思っていたし、結論から言えば早くこの時間が終わってほしかった。
 けれど、コンドラはどんどんてっぺんに差し掛かろうとする。
 その時、彼女が口を開いた。
「……何というか、難しいけど、さ。私、特別な異性と一度はこういうことをしたいって思っていたの」
 その一瞬だけ、時間が止まった。そんな感覚がした。僕と彼女以外、誰もいないこの二人だけの世界で彼女はそう答えた。まるで特別なものだと感じる。
 その瞬間、光が真っすぐに指してくる。光の方向を見ると、そこには一直線に光る赤くて大きな希望の光。
 僕は、僕たちはまさに今たった二人だけの世界にいるのだと実感する。
「……そ、それってどういうこと?」
 僕は精一杯頭から出てきた返答を出来るだけ、彼女に届く様に声音を上げた。
「安曇くんは、今までで出会った男子とはちょっと違うかなって、そう思っただけ」
 彼女は目を半分閉じて、顔を斜め方向に逸らして答えた。
 楠野さんが言う、ちょっと違うという意味は一体どういうことなんだろう。それだけが頭の中を埋め尽くして、奔放自在に頭の中をかき乱してくる。
 ただ、それだけの意味を僕が出した一つの結論へと辿りついていく。
 もしかして、楠野さんは僕の事を好きなのだろうか?
 それだけだった。けれど、僕はそうとしか思えなかった。けれど、思わせぶりな態度を見せて実は違ったり、もしかしたら僕の事をこれまでの友達とは違う、何かしら特別な存在だとみ出しただけで好きとは思っていなかったりするかもしれない。