僕は一体これからどこに行くのか全く知らない。すると、楠野さんは少し自慢げな表情で、「行ってからのお楽しみ」だと答えた。一体あの顔は何だったと心の中でぼっそりと突っ込みつつも、そのまま楠野さんの後を付いていくしかないので、僕はどんな所へ行くかを一人で考え続ける事にした。
 時間はもうすぐ夕方と言った所で、ファミレスに居た時間は多分1時間程、ブティックで買い物をしていた時間は多分3時間ぐらいだと勝手に思っている。そう思い返したら、ブティックにいた時間は結構長かったんだなと初めて実感する。ブティックに滞在していた時間は本当にあっという間で、僕は3時間もいたんだという実感があまり無かった。
 それにしても、その場所というのはいつ着くのか見当が付かない。多分、それは僕が内心どんな場所なのか気になっている気持ちが膨張して、早く見てみたいという思いもあるのだろうけど、一番は楠野さんのあの自慢げな表情だった。彼女があんな表情をするくらい、きっと凄い所なのだろうと内心勝手に思っていたからだ。
「そろそろ見えてくるよ! あと少しだから頑張れ!」
 すると、突然楠野さんがもうすぐ着くと言う事を知らせてくれて、そして僕にエールを送ってくる。
 
「ここは……」
 街を二人で歩いている際にも見えていたもので、まさか楠野さんが最後に行きたいという場所がここだとは思いもしなかった。
「これからここのビルの一番上にある観覧車に乗るからね。楽しみに待ってて!」
 都市のど真ん中にそびえ立つビルの頂上にある観覧車。この観覧車は最近出来たばかりで、これが設置されているビルと同時に造られたそうだ。この観覧車ビルは出来た当時、大きく話題になり多くの人で埋め尽くされたという話を聞いていた。