……いいと思っていたけれど、彼女はあっさりと答えてしまった。そして、その理由に僕はビックリしてしまった。それは、僕にお礼をするために半年同じ委員の仕事をすると言う事他ならない。
「で、でもどうして?」
 そこまでして僕にお礼をしたいと言われて、困惑を隠せない。本当に、そこまでしてこんなに大層なお礼がしたいのか?
 楠野さんは困り笑いをして理由を淡々と答えていく。
「いやあ、さ。だってほぼ初対面の相手にあそこまで出来る人、なかなかいないと思うの。だから、私気になってさ……」
 気になる、という単語を聞いた僕は何だか気持ちがドキドキし始めて来た。
「と、とりあえず図書委員の仕事始めよう」
 僕は話題を変えるために、楠野さんに仕事をするようにうながした。
「うん。そうだね」
 楠野さんは顔色を一つも変えずにただ、僕の提案に同意をした。
 その流れで早速図書委員の仕事を始めたのだが、やる事は単純だ。たまに本を借りたいという人がいれば、パソコンで本の貸し出しボタンを押して、バーコードを読み取る装置で本の背中にあるバーコードを当てたらOK。後は、返された本を元の位置に返したり、本の位置が正しいのか整理をしたりといった事をたまに行えばいい。けれど、図書室の利用者は少なめなので基本は暇と言えば暇なのだ。僕たちは図書室の貸し出しコーナーに設置してある椅子に二人で座っていた。正直な話、何も変化が無かったので退屈だった。
 楠野さんは本棚から引っ張りだしてきたらしく、ハードカバーの本を読んでいた。僕は楠野さんがどんな本を引っ張り出してきたのか、気になっている。というのも、楠野さんが見つけた本はどんな内容なのか……そんなどうでもいいことながらも気になってしまう。
「あの、楠野さん」