沖縄につく直前、また飛行機の中で例の夢を見た。
 東京で見たときよりも、呼ばれる感覚が強くなったと感じた。目が覚めてからも、うっすら方角がわかる。

 おへその少し上のあたりが、磁石か何かに引っ張られるような違和感だ。けれど私はそれを佐島には伝えなかった。

 羽田から与那国までの直行便はなく、那覇か石垣島で乗り換えることになる。那覇からなら飛行機で行けるが一日一本しか出ておらず、今日の便はすでに終わっている。

 私たちは石垣ルートだったので、夕方五時過ぎに石垣島について、それからすぐに五時半の便で与那国島へと飛んだ。
 フェリーのルートもあるけれどえらく揺れる上、四時間もかかるらしい。飛行機なら三十分で着く。

 とはいえ往復で十万円吹っ飛んだ……和佳には悪いけれど、和佳のためだから、勘弁してもらうしかない。

 無事与那国島についたのは、午後六時。
 東京ならとっくに真っ暗になっている時間なのに、明るかった。夕焼けが見える。

「日本で一番、夕日が遅く沈む島なんだ」
 まぶしそうに目を細めた佐島が、つぶやくように言った。

「なんで?」

「西の方にあるからだろうな」

「ああ……」

 こんなときでなければ美しいと思うのだろう。
 今はただの赤い空だ。血のようだと思う。

「――で?」

 与那国空港を出るとぽつんとした道路が広がっている。私が半目で睨むと、佐島はきょろきょろと辺りを見渡した。

「迎えがきてるはずだ」

「迎え?」

 首を傾げた瞬間、真後ろからクラクションを鳴らされて私は飛び上がった。

 小さな車がそこに停まっていて、中からよく日に焼けた老人が白い歯を覗かせて笑っていた。