十一月一週目の金曜日、部屋でリュックサックに荷物を詰めていると、音が気になったのか由佳ちゃんが顔を覗かせた。

「なにしてんの? そんな大きなリュック持ち出して……」

「前に言ったじゃん。旅行してくるって」

「ああ……そっか。今週三連休だっけ」
 由佳ちゃんがぼんやりつぶやいた。

 そう、彼女には「旅行だ」と伝えていた。別に嘘ではない。
 確かにこの三日間、私は遠くへ出かける。ただ、由佳ちゃんが想像するような、楽しげなものにはならないだろうとも思う。

 基本的には、人に会いにいく予定だった。おそらく五人。会えれば。

「本州は天気崩れそうだよ」
 予報を見てくれたのか、由佳ちゃんが言う。

「んー、まあ、大丈夫だと思う。本州じゃないから」

「え、まさか海外?」

「違う違う。沖縄」

「沖縄ァ? この季節に?」

「だからいいんだよ。空いてるらしいし。台風もこないし」

 特に観光目的ではないけれど、空いている方がありがたいのは事実だった。人が少ない方が、尋ね人はきっと探しやすい。台風も、こられると困る。
 とはいえ飛行機のチケットは空きがぎりぎりだったし、同じことを考えている人はまあまあいるようだった。

「まあ……じゃあ気をつけて行ってきてね」

 他にも色々言いたそうだったけれど、それだけにおさめてくれた由佳ちゃんに、私は曖昧に笑ってうなずいた。