夢を見た。

 大量のアサギマダラが、夕焼けに染まった空へ飛んでいく夢。夕日を受けて、浅葱色と茜色が混ざり、不思議な色合いの紫に染まった翅は淡く光を放ち、どんどんと空の高いところへと昇っていく。

 風もないのに、その脆く、薄い翅一つで、どこまでも飛んでいくのだ。
 羽ばたく音すらさせず。
 風も起こさず。
 ただ静かに、大気の流れに乗るように、見えない空の道を歩くように、アサギマダラは飛んでいく。

 ふっと、その静けさの中で、私は一つの声を聞いた。

 ――死にたい。

 その声を、私は知っている。

 ――死にたい。死にたい。死にたい。

 飛んでいくアサギマダラの群れの中、一羽だけ、蛍のように淡い光をまとう蝶がいた。
 一際高いところを飛んでいる。まるでどこか、もっと遠い、この世ならざる場所へと飛んでいこうとしているかのように。

 その優雅な羽ばたきの狭間で、私は確かに聞いた。

 ――嫌だ。死にたくない。