ささやかな墓だった。小さな丘の上の、小さな墓所で、私たちは短い時間を母の魂とともに過ごした。

 相変わらず少し強い秋風に、秋桜(コスモス)が揺れている。高く澄んだ空に引かれた一本の飛行機雲が、ひどく寂しげだった。

 家に戻る途中、お父さんが会社の携帯電話で何度か通話をしていた。由佳ちゃんは気疲れしたように何度もあくびをこらえていた。私はぼんやりしていて、何度か段差につまづいた。
 なんだか突然自分たちが、とても不完全な存在に思えた。

 結局お父さんは仕事場へ行かなければならないと反対方向の電車に乗り、私と由佳ちゃんは二人で自宅へ戻った。
 戻る頃には空模様が少し怪しくなり、家に着く直前に強烈な通り雨が襲ってきた。

「洗濯物! 洗濯物!」
 わらわらと洗濯物を取り込んだものの、二人して濡れ鼠になる。まったく、もうあと十分待ってくれれば、濡れずに済んだものを。

「先、お風呂入りな」
 私は由佳ちゃんを風呂に送り、自分はタオルで髪の毛を拭きながら一度自室へ戻った。

 いつ見ても殺風景だと思う。
 机の上には、いつか伏せたままの写真立てが、今も伏せられている。それ以外、この部屋の私物には、あまり手を触れていない。勝手に使っているのは服くらいだ。本棚だって、一度も触っていない。

 私はふと、本棚の一番上の右端に、背表紙の真っ黒な本があることに気がついた。それは日記のように見えた。好奇心と罪悪感が一瞬抗争を繰り広げたが、後者がわずかに勝った。

 私はそれを抜き出し、机の上に広げた。
 やはり日記だ。三年用。馬鹿みたいに分厚い。まるで図鑑だった。表紙の年月を見る限り、高校に入ってからのものだった。

 また沸き起こりそうになる罪悪感を押し殺し、私は恐る恐るページをめくる。