この体が自分のものではないという意識は、常に頭の中にある。

 けれど昔の体の記憶は、確かに少しずつ失われている。

 自分がかつて誰だったのか、わからなくなる日がいつか来てしまうのだろうか。

 それはこの体に、いつか自分の魂が馴染んでいってしまうということなのだろうか。

 まるで横取りをするみたいだ。乗っ取るみたいだ。

 嫌だ、と思った。だけど、どうすればいいのだろう。

 あの子はもう死んでしまって、どこにもいないのに。

 私はもはや、この体を離れることもできないのに。

 返すべき体の持ち主と、戻るべき体がない私に、いったいどうすることができるのだろう。