*


「やっと、終わったぁ……」

「終わったね、秋、ここに満開のコスモスが咲いたら壮観だね」


お互いに土だらけになった手と顔を見合わせて笑いあう。

目の前の花壇は、さっきまでの殺風景な均された土とは違う。これから芽吹いていく生命が眠っている。

そう思うと、今はただの土しか見えないこの花壇にすごくワクワクした。

夏休みの前、ここには向日葵が咲いていて、私達に元気をくれた。

大好きな人から「好きだ」って言葉をもらった。

すぐに返すことができなくて、その後東条くんに起こった事故のせいで、結局告白の返事をすることはできなかった。

たった1カ月位のことなのに、色々なことがあった。

泣きたい位辛いことも、どうしていいか分からなくなって不安になったことも。

それでも私の中に、あの時と変わらない想いがたった一つちゃんと存在している。

私を悲しい気持ちにさせたのも東条くんなら、私を幸せな気持ちにしてくれたのも東条くんで。

確かに辛辣な言葉はあったけれど、それでも、気付けばいつも近くにいて、私に色々な想いをくれた。

ケガが治ってからは、真っ直ぐに私を見てくれていた。

やっぱり好きだなぁって思う。

私は東条くんが好き。
入学式のあの日、初めて出会って、初めて声をかけてくれた人。
私に楽しい高校生活を教えてくれた人。

東条くんはずっと私に想いを伝えてくれていた。
あの夏休みの前の日も、あのバーベキューの日も。
いつも彼からの告白を私はすぐに返せなかった。そして今も彼が与えてくれる優しさに甘えてばかりいる。

ずっと思っていた。願っていた。
あの時のキミにもう一度会いたいって。
向日葵の前で告白してくれたあの日のあの時間のこの場所で、もう一度って。

でもそれじゃあダメだ。

今度はわたしから告白しないとダメだ。

いつだって、どんな時だって、東条くんからの言葉を待っていた弱くてズルイ自分のままじゃダメなんだ。

隣で立ち上がって土を払う東条くんを見上げた。

既に暮れ始めた太陽を背負って立つ彼の姿は眩しい。

私も彼の隣に立って、大きく深呼吸をした。

手はドロドロだし、顔にだって、せっかくのデート服のワンピにだって土がついてしまらないカッコ。

それでも、今しかないって思ってしまった。

せめてと両手に着いた土を払ってから、東条くんの日に焼けた二の腕に触れた。