お互いに言葉もなく、ただ重たい空気に潰されまいと必死で堪えていた気がする。
そんな空気が激しい痛み共にぶっ壊された。
「痛ぇっ!」
「痛っ、」
俺と、結城の声が同時に上がって、顔をあげれば結城の隣には山見が、俺の背後には浜野が立っていた。
痛みの原因は……。
目の前の結城が涙目でオデコをさすっているし、俺はジンジンする背中を自らの手でさすった。
「お前ら俺らのこと、あんなに容赦なく振っといてなにグダグダ言ってるんだよ!」
「そうだよ!」
憤慨した様子の浜野と山見の顔に、俺も結城も唖然とした。
「だ、だからって背中ぶっ叩くことねーだろ」
「そ、そうだよ。デコピンすっごく痛かった」
負けじと反論する俺と結城に、浜野と山見が場所を入れ替わって、それぞれ隣の椅子に座ってくる。
俺の隣には山見が、結城の隣には浜野が。
「結城、やっぱり俺にしとけば?こんな自分の行動に責任持てないやつと付き合うとかやめといた方がいいだろ」
「はぁ?」
「そうそう。東条くんだって自分のこと信じてくれないコより、絶対私の方が東条くんのこと大切にできるもん」
「そんなっ、」
浜野の言葉に俺が声をあげ、山見の言葉に結城が声をあげる。
「ふ、ふざけんなよ。頭のケガのせいで俺が信じてもらえないのは仕方ねーことだし。俺はこれからの行動で結城に信じてもらうようにする!」
「わ、私だって、東条くんのこと信じることできるし、大切にできるもんっ」
お互いに返した言葉に、隣にいる浜野と山見が大きく溜息を吐いた。
結城と俺は勢いのままに口にした言葉に肩で息をしながら、言い終えた今も興奮がおさまらない。
「……山見、帰るか」
「帰る。ほんとバカバカしいったらないわ」
呆れた声で言いながら、2人は俺たちには見向きもせずに席を立って行ってしまう。
残された俺と結城は茫然と2人の背中を見送るしかなく。
2人の姿が小さくなって見えなくなったころ、俺と結城は同時に息を吐いた。
「2人に上手く言わされたって感じだな……」
「う……なんか、恥ずかしすぎる」
後から考えれば、あっさりと2人の目論見に気付かされる。
それにしてもあの二人が組むとか、有り得るのか?
2人にしてやられた俺たちは、それでもすぐには立ち直ることができず、俯いてただひたすら時間が過ぎるのを待った。