「ペンギンでも見に行く?」
「行く」
即答で返った結城の声に頷いて、俺たちはペンギン館へ向かった。
体験コーナーでは餌やりができるみたいで、2人で申し込む。
飼育員さんの指示通りに生の魚を掴んでペンギンの口元に運ぶと小さな嘴を開けたかと思ったら、一気に丸呑み。
思わず息をのんで見入ってしまった。2人で同じ反応をしてしまった俺たちを飼育員さんが笑って指摘する。
「可愛いカップルさんですね」
そんな言葉に2人して照れながら、結城がその言葉を否定しなかったことがなんだか嬉しくて仕方なかった。
「喉乾かん?」
「うん。何か飲む?」
「スタンプ押してもらってるし、ちょっと海沿いのオープンテラスのカフェ覗こうぜ」
「うん」
6人で来ているというのに、俺も結城も2人で過ごす時間を選んでいた。
田村にだけはちゃんとメールで伝えているのは結城らしいと思う。
あの二人は一緒に回っているだろうけど、浜野と山見はどうなったのか、ほんの少し気にはなっていたが、今は結城と2人で過ごしていたかった。
できれば、はっきりと結城からの答えを聞きたいと思っていたし。
でも、自惚れでもなくこうして繋ぐ手を見下ろして、拒否されていないこと自体で結城も俺の事を好きなんじゃないかってそう思ってもいる。
聞いてみたい。
オープンテラスのカフェに向かい合って座り、海を眺めながらアイスティーを飲む結城を見ていたら無性にそう思った。
「あのさ」
「はい?」
視線を俺に戻した結城の表情は、とても優しかった。
その表情を、俺が尋ねる言葉で曇らなければいいと願いながら口を開く。
「あのバーベキューの日に、俺が言ったこと覚えてる?」
結城の目が見開かれ、そして息をのむのが分かった。
そして、途端彷徨う視線に一気に不安が伸し掛かる。
「……うん」
「今日はさ、みんなで遊びに来たけど、今度は2人でどっか行かね?」
「……」
すぐに答えてくれないのは、やっぱり俺のことをそういう目で見れないから?
黙ったままの結城の反応が気になって仕方ない。
さっきまで手を繋いでいたことさえ夢だったんじゃないかと思う。
浜野も結城に告白したと聞いた。
アイツの方がいいとか?もしかしてやっぱりさっき何かあったんじゃ……。
悶々と考え込む俺の前で、結城が真っすぐに顔を上げて俺を見つめてきた。