「おす、結城。今日のカッコ可愛いな」

「あ、ありがとう」


臆面もなくそう言い切った浜野くんにとりあえずお礼を言う。
でも、なんていうか、居心地が悪い。

早く東条くん来ないかな。

そう思って彼の家の方向を見ていた。

視界に傘を差して歩く二人連れの男女に目が止まる。
傘で顔が見えないからよく分からないけれど、男の人の方が、何となく東条くんのような気がしていた。

でも、隣に女の人を連れているみたいだし、人違いだよね?

そう思っていたのに、近づいてくる2人組のうちの男性は、間違いなく東条くんその人で。

仲良さげに隣を歩いていた女性は……。


「山見、さん?」


顔がはっきり見えて、彼女の視線も私達の方に向けられた。


「みんな、おはよう」

「山見、どうしたの?」


さなちゃんが彼女に近づいて尋ねた。


「ごめん、遅れたね。東条くんが寝坊してさー、迎えに行った私まで巻き添えだし」

「そうじゃなくてって、東条の家に迎えに行ったって?」

「今日、いつものメンバーで水族館行くって聞いたから。だったら、私もってついてきたの。別にいいでしょ?浜野もいるってことは、別にデートってわけじゃないんでしょ?」


さなちゃんと山見さんが話すのを傍で黙って聞いていた。

Wデートだと思い込んでいたのは私だけだったんだ。東条くんは、皆で遊びに行くつもりだったんだ。

恥ずかしい!勘違いしてた。

こんなデートで着るみたいなカッコして、1人で盛り上がって、私ってカッコ悪い。

顔から火が出そうな程恥ずかしかった。俯いて熱を冷ますべく顔を手で仰ぐ。

それに、山見さんわざわざ東条くんを迎えに行ったんだよね。
家から待ち合わせて行こうって話したのかな?

東条くんと山見さんって……。

東条くんを見ると、なんだか浮かない顔で東雲くんと話をしている。

楽しみにしていた今日の水族館デートは、なんだか今日の空とおんなじで、どんより重たい空気の中始まった。