ハッキリ言って、まったく記憶にない。
ある意味結城が誤解しているんじゃないかと言いたい位だ。
でも、それが本当だとしたら、結城の様子も山見が言っていたことも、納得できてしまう部分がある。
なんてこと言ったんだよ俺は。
いや、その時の俺は俺であって、でも俺ではないというか……。
でも、そんな言い訳通用するのか?
「もう一度告ればいいだけじゃね?」
悶々と考え込む俺に、東雲はあっさりと言い放つ。
「おまえなぁ……」
「たとえお前の意志ではなかったとしてもだ。言ってしまったことを今更グチグチ考えたって仕方ねーだろ?結城はあんなひどいことを言われたとしても、お前に関わることから逃げたりしてねーじゃん」
「え?」
「俺だったら、嫌われてる相手に誘われて、浴衣の着付けを手伝ったり、夏祭りに行ったり、バーベキューに来たりしない。それって、結城の精一杯の意思表示じゃねーの?」
「そう、なのか?」
藁にも縋る思いで東雲に尋ねたのに、奴は「ま、都合がいい考えだと思わんでもないけどな」と冷たい答えを返してきた。
でも、今の俺にはそうかもしれない結城の精一杯の気持ちに縋るしかないんじゃないのか?
結城に謝って、もう一度告白する。
それしか今の俺にできることはないんじゃないか?
「そういえば、大海が結城に告ったとか話してたけど、結城返事したのかな」
思い出したと言わんばかりの東雲の言葉に、思わず東雲の胸倉を掴んでいた。
「ぐぇ、なんだよ、いきなり」
「浜野、やっぱり結城に告ったのか?」
「なんだ、知ってたのか?電話で話した時に言ってた。玉砕覚悟で告ったって言ってたけど」
「あの返事って、やっぱり告白の返事だったのか……」
「お前、うかうかしてらんねーな」
揶揄うような口調にカチンときたが、東雲の言う通りうかうかしていられないのは事実。
今日のバーベキューは姉貴のおかげだけど、この機を逃したら、夏休みにまた会える保障なんてどこにもない。
今日、言うのか?
あの夏休みの告白の時だって、すごく緊張して余裕なんて皆無で。やっとのことで告白したのに。
あれを、また?
「ま、一度は言えたんだ。問題ねーだろ?」
「だから、お前はなんでそう適当なことばっかり……」
東雲のいつもの余裕が、彼女ができたことでさらに余裕に見えてムカつくったらない。
でも、今の俺は崖っぷちなんだ。
ちゃんと誤解を解いて思いを伝える。今日やるべきことはこれだけ。
結城の方を見ると楽しそうに女子トークに花が咲いている様子に胸がキュッとなる。
気合をいれるべく、ギュッと両手を握りしめた。