「さっきの、あれなんだよ」
キャンプ場に着いて、ターフを張ったり、炭に火をつけたりとそれぞれが作業に分かれる中、東雲が肩を思いきりぶつけてきた。
「いってぇし!なんだよ、あれって」
「付き合ってないお前らの方がイチャコラしてるのって、どうかと思うけど?」
「イチャコラ……って、別にそんなの……」
否定しきれないのは、さっきの車の中でのことを東雲にも田村にもバッチリ見られているからだ。
結城は田村と一緒にバーベキューの食材の準備を少し離れたところでやっていて、俺たちの話は聞こえていない。
「なんだかんだ言って、やっぱりお前って結城に惚れてるんだよな」
「なにをいまさら。お前らがたきつけたくせに……」
「それな。たきつけて、お前があの日結城に告白したものだとばかり思っていたのにさ」
「?」
「告白どころか、結城への気持ちも違うって言ってたアレって、どういうこと?」
さっきから東雲の話がよく分からなかった。
俺、あの日のことを東雲には話してなかったか?
「俺、あの日、ちゃんと結城に告白したけど?」
「……は?」
「だから、俺、結城に告ったの」
「嘘だろ?」
「お前に嘘なんて言ったって仕方ねーだろ。俺の気持ちみんなして知ってたくせに」
「知ってるよ。2年のバレー部のレギュラー組は全員な」
「そう言って俺をたきつけておいて何言ってんだよ」
「じゃあ、なんで結城にあんなひどいことを言ったんだ?」
「は?」
東雲が言った言葉が本気で意味が分からなくて唖然とした。
東雲の方も俺の言葉に本気で驚いている様子だ。
「単刀直入に聞くけど」
掴んでいた炭を置かされて、俺を皆の輪から少し離れたところまで引きずってきた東雲が真剣な顔をして詰め寄ってくる。
「なんだよ」
「お前の様子がおかしかった原因は、脳の出血が原因だったよな、確か」
「あぁ……そのせいで俺、記憶が曖昧な部分がある」
「だとしたら、お前が意識しないところで結城に酷いことを言っちまったってことなのか?」
「なぁ、さっきからなんなんだ?俺が結城に何を言ったって言うんだよ」
「俺はさなから聞いたんだ。だから、また聞きになるけど」
「それでもいいから教えてくれよ。結城の様子がおかしいのもずっと気になってた」
その原因が東雲のいう話の中にあるのなら、聞かないわけにはいかない。
渋る東雲から強引に話を聞きだした俺は、自分が行った愚行に愕然とした。