姉貴主催のバーベキュー当日。
東雲と田村、そして結城が俺の家に来た。
姉貴が車を出して、他の友達とはいつも通り現地集合になるから、行きはこのメンバーに姉貴の彼氏が加わった。
姉貴の愛車はワゴンタイプの7人乗り。助手席に姉貴の彼氏のコタローさんが乗り込み、一番後ろに東雲と田村、俺と結城は真ん中の席に座った。
「きょ、今日はお招きいただきありがとうございます」
「やぁだ、ほたるちゃんカタイよぉ。今日はねこの前の浴衣の着付けのお礼もかねてるから、しっかり朔をこき使って!」
「東条くんを……?」
「なんで俺がこき使われるんだよ!」
姉貴の無茶ぶりに苦笑する結城と、いつものことだとは思いつつも横暴さに文句を言う俺。
出だしの雰囲気は上々って感じだった。
後ろの座席の2人はすっかり2人きりの世界に入り込んでるし、前は前でイチャコラしてやがるし。
おかげで結城も俺と2人で話すしかないみたいだし……って、なんか卑屈になってね、俺。
なにはともあれ、自分が結城になにをしたのか、言ったのか分からない今誤解を解くために時間が必要だ。
「バーベキューとか、久しぶりかも」
「俺は毎年東雲と一緒にこき使われてるわ」
「そうなの?姉弟仲いいんだね」
「仲いいって言うのか?それ」
今日の結城はバーベキューと聞いていたからか、カジュアルな装いだった。
Tシャツにジーンズの上に丈長の薄地のシャツを羽織っている。
いつの間にか少し伸びた髪は、片側の肩に卸す形で赤いシュシュで結んでいる。
私服見るの初めてじゃないけど、今日も結構可愛いし。
他愛のないお喋りをできることが嬉しかった。
こんな風に過ごすことができれば、少しずつでも距離を縮めることができるって本気で思ってた。
山道に入りカーブが続く中で、後ろでは田村や東雲がお互いに右へ左へ体を預けあっているのを見て、ふと気付いた。
結城はカーブがきて体が傾きそうになるたびに、必死でアシストグリップに掴まっている姿に。
俺と体が触れ合うのを必死で避けようとしているみたいに。
「結城、腕プルプルしてる」
「え?」
揶揄うことで少しでも場が和むような、そんな気がした。
結城が俺に体重がかからないようにしてくれているのか、本当に俺に触れたくないのか分からない。でも、後者なら結構傷つく。
「別にそんなに必死に掴まってなくても、俺平気なのに」
ボソッと零した声に結城は驚いた顔をした。
それって、なんでだ?
「カ、カーブって結構勢いつくから、わ、私結構重いし……」
驚いた顔のあと、一気に顔を赤く染めた結城の、アシストグリップを掴む手を強引に解いた。
途端狙ったかのようにカーブがきて、支えを失った結城の体が俺の肩に寄り掛かる。
それを受け止めつつ、「ほら、平気だろ?」と笑って見せる。
「う、うん。あ、ありがと」
答える結城の照れた顔が可愛くて、思わずにやけてしまう顔を、後ろの2人に見られたのは迂闊だった。