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なんだよ、あれは!
鳩尾の辺りから、フツフツと湧き上がってくる怒りを何とか喉元で堪えて押し戻す。
病院から直行でスポーツセンターに向かったのは、勿論バレー部の応援がしたかったからだ。
でも、退院して一番最初に会いたかったのは、バレー部の奴らじゃない。
俺が一番に会いたかったのは……結城になんだ。
だから、バレー部の応援を理由に結城に電話をした。
それなのに。
何故か、バレー部の応援に来たという浜野と一緒にいて、俺がやってきたら隣の席を田村に譲ろうとしてるし、俺の隣にいる時は、いちいちビクビクして俺から逃げようとする。
なんだよ、あれ!
「……会いたかったのは、俺だけかよ」
呟きと同時に目頭まで熱くなってきた。
何故かいつまでも隣にいる山見に、泣き顔なんて死んでも見られたくなくて、必死に歩幅を広げて並ぶのを避ける。
「東条くん、体調悪いの?」
ほとんど走るようにして隣にくる山見の見当違いの心配を無視して、俺は姉貴が待っている駐車場へ急いだ。
浜野が結城に何を言ったのか分からないけど、もし、浜野が結城に対して、俺と同じ思いを抱いているのだとしたら、先に告白したのは俺なんだ。
きっと結城だって、俺の事嫌ってはいないはずだって、あの告白の時の様子からそうだって思ったのに。
どうやら頭を打ったせいで、あの日以降の記憶がすっぽりと抜けてしまっている俺は、結城から告白の返事をもらえないままで今日にいたっている。
でも、さっきの結城の様子はおかしかった。
俺の告白のことを覚えていないというよりは、なんだか俺に対して嫌悪感を抱いているみたいだ。
『東条くん、私のこと、そんなに嫌いなのかな?』
結城が言ったあの言葉の意味がどうしても分からない。
好きだって告白した相手のことを、どうして嫌いだって思わなきゃならないんだ。
あの日、告白をした日から今日まで、すべての記憶を失っているわけではない。
夏祭りの日、俺のうちに来てくれて姉貴の浴衣の着付けをしてくれた時のこと、うなされた俺の額に手を当てて心配してくれた時のこと。
覚えている結城の顔は、俺の事を嫌ってなんていなかったはずで。
それすらも、夢だったんだろうか?
「好き、なのに……」
結城のことがずっと好きで、やっとの思いで告白したのに。
結城の優しさを知るたびにどんどん好きになっているのに。
なんで結城は俺が結城の事を嫌いだなんて誤解しているんだろう?