「くっそ〜、やっぱ2試合目が県大常連校ってヤバイわ」

「悔しいよね!みんな頑張ってたのに!」


東条くんとさなちゃんは試合が終わってからもずっと悔しがっていた。

バレー部員達は、長い顧問の話の後、気が抜けた様子でそれぞれ現地解散。
本当はみんなで東雲くんのお疲れ会をしたかったのだけど、東雲くんの希望でそれは後日になった。


「私、東雲と一緒に帰るね」


そういってなんだか疲れた様子の東雲くんと肩を並べて去っていくさなちゃん達の姿を、浜野くんと東条くんと一緒に見守った。


「俺らも帰るか……」

「そう、だね」

「そうだな」


私達もなんだかテンションが低い状態のまま、東条くんの言葉に同意した。


「じゃあ、私自転車だから」


自転車置き場は少し離れたところにあって、私は二人にそう言って手を振る。


「「結城」」


東条くんと浜野くんの声が重なって、私を呼ぶのに少し驚いて振り返ると彼らもまたお互いに顔を見合わせている。

先に口を開いたのは、浜野くんだった。


「結城、さっきの返事、今度聞かせて」

「え?」


さっきの返事とは、多分間違いなく、試合が始まる前に言われた告白の返事のことだ。

でも、それを今この場所で言わなくてもいいのに……なんて、理不尽な愚痴をこぼしてしまいたくなる。

咄嗟に東条くんを見てしまって、彼の訝しむ様子に嫌な汗が出てくる。


「う、うん」

「じゃあ、またな。東条も!」

「あ、あぁ、またな」


言い逃げみたいな状態で去っていく浜野くんを恨めしく思った。


「と、東条くんはどうやって帰るの?」

「ん?あぁ、姉貴が駐車場で待っててくれてるから……それよりも、」


言葉を続ける東条くんを前に帰り損ねた私は、彼の言葉を待った。


「浜野が言ってた返事って?」

「え?」


私自身は東条くんに浜野くんとのことを知られたくなかったから、彼の言葉に慌ててしまったけど、東条くんも気にしてくれるなんて思いもしなかった。

だけど、告白のことを正直に話せるわけもない。


「べつに、大したことじゃないよ」


ううん、大したことだ。私にとっては重大な出来事だ。人生初の告白だった。
東条くんのあの告白をノーカンとするなら。

って、未だに彼のあの時の言葉を忘れられずにいる自分が情けないし、浅ましい。

はっきり迷惑だって言われているのに。


「……結城、俺への返事もまだだよ」

「え?」


不意に呟くように言った東条くんの言葉に、一瞬耳を疑った。

東条くんへの、返事?

彼に返すべき返事なんてあっただろうか?思い当たるとすればあの告白だと私が思い込んでたこと位だけど。

でも、それは違うって……。