「ごめん。なんか意地の悪い言い方したよな、俺」
「……」
返す言葉が見つからなくて、コートの方に視線を落とした。交代したのか、今は別の高校のアップが始まっている。
さなちゃん早く来ないかな、そう思い観客席を見回すと丁度入り口の方からさなちゃんが入ってくるのが見えた。
その後ろから東条くんの姿も見えた。
「浜野くん、東条……」
「俺、結城の事が好きなんだけど、俺と付き合ってくれない?」
東条くん達が来たよ、と言いかけた私の言葉を遮るように浜野くんが言った言葉に息をのんだ。
「え?」
「だから、俺と付き合ってくれないかって言った」
同じ言葉を繰り返すことに抵抗があったのか、彼はさっきより少し声を落として、さらに私から視線を逸らした。
でも、逆に私は浜野くんの顔を凝視してしまった。
今、告白されたの?浜野くんに?
驚いて言葉もでない。彼とは1年生の時に同じクラスで、2年になってもみんなと遊ぶ時には必ずいたメンバーのうちの一人だったけど、彼の事を特別な目で見たことは一度もなかった。
まさか、浜野くんが私に好意を持っていたなんて、全然気づかなかった。
「ほたる!」
私を呼ぶ声に我に返って振り返ると、後ろからさなちゃんが東条くんと連れ立ってやってくるところで。
「あ、さなちゃんに東条くん……」
「おぅ、浜野もいたんだ?久しぶり!」
「東条、退院おめでとう。もう大丈夫なのか?」
浜野くんが東条くんと話しながら近づいてくるのを見て、私は席を立って東条くんに席を譲った。
隣に座るのは躊躇われて、さなちゃんに奥に入るように促したけれど無言で押しやられて、結果浜野くん、東条くん、私、そしてさなちゃんの順で横並びに座ることになってしまった。
肩が触れるくらい近くに東条くんを感じて、体の左半分がなんだか無性にソワソワする。
チラリと東条くんに視線を向けると、東条くんの方を向いて喋っていた浜野くんと目が合ってしまう。
すぐに逸らしてさなちゃんに向き直る。
「ほたる、どうした?なんだか挙動不審」
さなちゃんに目敏く指摘されて口ごもる。
この席でさっきの浜野くんとのことを話せるわけがない。
「別に、なんでもないよ」
「そ?あ、そろそろ試合始まるんじゃない?」
さなちゃんの意識はコートに向かう。
見れば東雲くんや3年生のレギュラーがコートに入っていくのが見えた。