「園芸部の仕事は好きでやってることだから、それほど苦にはならないけど。暑いのは暑いよね」

「暑い、確かに毎年暑いんだけど、花の17歳。家に閉じこもっているのは不健康だし、つまらないんだよぉ」

「花の17歳って……」


うちのお母さんが使う表現の古さに少しおかしくなって笑う。

それに、さなちゃんには……。


「東雲くんとデートすればいいのに」

「彼奴はね、明後日のバレーの試合に出るから、毎日部活に勤しんでいるのですよ。真面目にね。」

「そっか、バレー部の3年のエースの人、引退したんだっけね」

「そうですよ。せっかく恋人になったっていうのに、彼奴は私よりもバレーを選びやがったのですよ」


なんだかヤサグレた口調のさなちゃんは、私のベッドの上でゴロゴロと右に左に転がっている。

そっか、東雲くんが忙しいから、相手にしてもらえなくてうちに来たんだ。


「練習、応援に行けばいいのに」

「受験生の3年生と一緒に練習してる彼氏の下に応援なんて行けませんよ。東雲にも重々その辺は釘を刺されてます」

「そう、だね。さすがの東雲くんも、そこは空気を読んでるんだ」


ガクン、と首を折るように頷いたさなちゃんを慰めるようにジュースを手渡した。


「ありがと。でね、明後日、東条くんも退院でしょ?その足で少しバレーの試合見に来るって言ってたし、ほたるも一緒に行くでしょ?」


東条くんに会える。

そう考えれば、今までだったら絶対応援に行っていた。

でも。


「行かない、かな。私は」

「え?なんでよ。今までだって、応援に行ったじゃない。試合には出られないだろうけど、一緒に男バレを応援しようよ」

「……また、勘違いしたくないんだよね」

「勘違い?」


さなちゃんの訝しむ様子に、私は空笑いで返す。

今までは、何を気負うこともなく応援に行っていた。それは、東条くんへの気持ちを誰にも知られずにいたからだ。

あの日、東条くんに妄想だ、気持ち悪いって言われた時のショックは決して小さくないし、忘れてもいない。

友達として付き合ってきたクラスメイトが、自分に対する友情以外の好意を持っていると知られてしまったら、今までと同じようにはいられない。

応援なんて行ったら、きっとまた東条くんに嫌な思いをさせてしまうかもしれないから。

だから、行けない。

東条くんがみんなで応援に来いよって、彼から誘われない限り、私にあの場所行く権利はない気がするんだ。

それをさなちゃんに言うと、訳が分からないといった風に呆れた様子だ。