「まぁ、とにかく元気みたいで安心した」
「そうだね。あんまり長居しても悪いし……東条くんまたね」
「あら、もう?じゃあ、また退院したら連絡させるわね」
「おぅ。今日はサンキュな」
東雲くんとさなちゃんが東条くん達に声をかけて、私もその隣でお辞儀をして病室の扉をスライドさせた。
「……結城、」
不意に呼ばれて振りむく。
ベッドの上の東条くんが、なんだか話すのを躊躇っているような、そんな感じで私を見ている。
ベッドの方に少しだけ近づくと、彼は俯いてポツリと零すように言った。
「メール……またするから」
「?……うん、分かった。またみんなで遊ぼうね」
改めて言われたことに少し驚いたけれど、今までだって遊びのお誘いをメールで受けたことはあった。
そういえば、あの夏休みの前位からは、一度もなかったな。
思い出すとまだ胸が痛い。
もう勘違いしないようにしなきゃ。せっかくまた前みたいに普通に話してもらえているんだから、その方がずっといい。
今度こそ、といった感じで病室を出た。
「東条、元気そうだったな」
「そうだね。あの様子だったら、夏祭りのリベンジできそうだよね」
「なんか、計画してみるわ」
「任せる」
前を歩く東雲くんとさなちゃんの会話に耳を傾けながら、またみんなで一緒に遊びに行くことを考えたら楽しくなってきた。
あれ?
2人の後ろを少し離れて歩いていたから、不意に目に入ったんだけど。
東雲くんとさなちゃん、手繋いでる。
思わず凝視してしまって、さなちゃんに気付かれてしまった。
私の視線に気付いたさなちゃんが一瞬で顔を真っ赤にして、東雲くんの手を払う様に離れた。
「なに?急に」
驚いた東雲くんが、離れて行ったさなちゃんの手を再び握りに行く。
「ちょ、東雲!……ほたるに、見られてる」
「は?あぁ、それが?」
「⁉」
「結城ー、こんなところで報告ってのもなんだけど、俺ら付き合うことになったんで。よろ!」
繋いだ部分が見えるように手を持ち上げ、あんまりにも堂々と宣言をする東雲くんと、その隣で真っ赤な顔で東雲くんと私を交互に見るさなちゃん。
うわぁ……。
思わず顔がにやけてしまう。いつの間に2人が付き合うことになったんだろう。これはさなちゃんをしっかり問い詰めなきゃ。
「よかったねぇ、さなちゃん。東雲くんさなちゃんと幸せにね」
「結城ー、それ結婚式で年配のおばさんクラスが言うセリフみたい」
「そ、そうかな?で、でも、本当によかったって思ってるんだよ」
「サンキュー」
いつものように明るくって、ちょっと軽い感じの東雲くんだけど、さなちゃんは照れながらも嬉しそう。
東条くんのことも、さなちゃんと東雲くんのことも、今日はなんだか嬉しいこと続きだ。