榊ちゃんが先生に話をしてくれたこともあってか、東条くんの頭の検査が行われたらしい。

先生が至急東条くんの両親を呼ぶように言ったそうで、そこからは何だか慌ただしい雰囲気だった。


「東条くんに、なにかあったのかな?」

「……どうだろ。でも、ご両親もすぐにくるって話だったから、何があったか後で聞いてみよう」


不安ばかりが膨らむ中で、榊ちゃんの存在がとてもありがたかった。

あれからすぐに東雲くん達もきたけど、あまり大勢病院にいても仕方ないって話になって、救急車を呼んだ榊ちゃんと、頭痛のことを話した私はご両親が来るまでは病院にいることにした。


「ほたるちゃん!」


夜間の救急入り口から入ってきた人達の中の一人が、私の名前を呼んだ。


「東条くんのお姉さん……」

「朔が倒れたって……」

「ちょうど私が傍にいたんですけど、急に頭痛を訴えて倒れてしまったんで、救急車を呼びました」


私に代わって榊ちゃんが説明してくれる。
お姉さんのすぐあとを追ってきていたご両親と思われる男女も、榊ちゃんの説明を聞いて頷いている。


「私、ご家族が来たことを伝えてきますね」

「あ、私達も一緒に行くわ」


榊ちゃんと東条くんの家族が救急治療室に入っていくのを見送り、私はその扉の前で立ち尽くしていた。

東条くん、お願い。どうかたいしたことありませんように……。

両手を胸の前でギュッと組んで、心の中でそう祈った。

すぐに榊ちゃんが出てきて、お医者さんがご家族に話をするらしいと教えてくれる。


「チラッと聞こえてんだけど、東条くん手術になるみたい」


榊ちゃんの言葉に息が止まりそうな程驚いた。

目の前がクラクラして吐気がする。立っていられなくて、榊ちゃんに支えられてソファに腰かけた。

手術って、どうして?どこが悪かったんだろう?
東条くんに一体何が起こっているんだろう?

何もわからないことが、こんなにも怖くて不安で仕方ない。


「榊ちゃん……東条くん、大丈夫だよね?手術って、それをしたら、前みたいに元気になるんだよね?」

「……何の手術かは聞こえなかったけど、大丈夫だよ。今はお医者さんを信じるしかないでしょ」

「……そう、だよね」


その後東条くんのお姉さんが出てきて、榊ちゃんの説明を補足するように教えてくれた。


「……コウマクカ、ケッシュ……?」


聞きなれない言葉に、何か大変な病気じゃないのかと不安が大きくなる。

お姉さんの話だと、東条くんの脳に血液が大量に溜まっていて、脳を圧迫しているらしい。


「頭痛や眩暈の原因はそれだろうって話なの。だから、血を抜く手術をしたらきっと元通りになるだろうって」

「血を抜く……」


手術をするってことだけでも、大変な事だと分かる。それに加えて脳に溜まった血を抜くと言われても想像ができなくて、ただひたすら怖いとしか思えなかった。

でも、その手術をしたら、東条くんは今までのように元気になれるのだと聞いて、それだけは安心できた。