東条くんが倒れたと聞いて、心臓が止まるかと思った。

夏祭りの日、浴衣の着付けをする目的で東条くんの家に行ったときも、彼の様子がおかしかったことに気付いていたのに、どうしてもっと早く病院行くように勧めなかったのだろう。

スマホに榊ちゃんから連絡が入って、近くの病院に運ばれたと聞いた私はみんなより一足先にその病院に駆け付けた。

救急車で搬送された東条くんに付き添う形で、先に病院に向かっていた榊ちゃんは、救急治療室と書かれた部屋の前の長椅子に座っていた。


「榊ちゃ……東条くんはっ?」


浴衣と下駄というカッコで全速力なんて初めての事で、息は上がるしすごいカッコになっていたはずで。

そんな私を落ち着かせるように、榊ちゃんは私を隣に座らせて、ボサボサになった髪を撫でて整えてくれた。


「落ち着きなって、ほたる。みんなを置いて来ちゃったの?」


同じ年とは思えない、穏やかな榊ちゃんの声を聞いていると、それまでまともにできていなかった息ができるくらいにまで落ち着いてきた。


「もう少ししたらみんな来ると思う。バラバラだったから……東雲くんがみんなを集めてくるって話していたはず」

「そっか。東条くんなら、熱中症だろうってことで今点滴を受けてるよ」

「熱中症?それだけ?本当に」

「……そういえば、頭を痛がってたけど、最近の東条って調子悪かったの?」

「夏休みに入る1週間位前だったと思う。その頃から頭痛と眩暈が起こるようになったって言ってたの。でもずっとじゃなくて寝たらよくなるっていってたから……でも、今日も昼間辛そうだったから……」


もしかしたら本当に熱中症なのかもしれない。でも、もし他の病気が隠れていたら。

考えると怖くて仕方ない。

今日の昼間もずっとうなされていた。

私は何もできなくて……。

俯いて込み上げてくる涙を堪えた。

榊ちゃんはずっと背中を撫ぜてくれていて、私が話し終えると「ちょっと待ってて」と言って、救急治療室へと入っていった。

しばらくして部屋から出てきた榊ちゃんが、今、中にいる看護師さんに伝えてきたからと言って説明してくれた。


「ずっと頭痛が続いていたみたいだから、頭の検査もしてもらえませんかって話してきた。私、ちょっと東条の家に電話してくるね。親呼ぶように言われてたんだ」

「榊ちゃん、ありがとう」


情けないけど、お医者さんからの話を一度も聞いていない私には何も説明できないし、こんなに動揺していたら、東条くんの家族を不安にさせるだけだ。

榊ちゃんに頼むしかない。

こんな時なのに冷静に動ける榊ちゃんのことが羨ましくて仕方なかった。